【無料小説】 だから俺はクリスマスが嫌いなんだ 恋愛小説

だから俺はクリスマスが嫌いなんだ:エピローグ1

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翌年、12月24日。
今年もやはり飽きもせずやってくる年末。
たまにはショートカットしたりしないのだろうか。
全く面倒臭い。
せめてもっと何事も無いように過ごせないものだろうか。
浮かれたりせず。
慌ただしくなったりせず。
むしろ沈む事すら無い。

でも、どんな物理学の研究書を読み漁っても、世界中の自称超能力者を集めても、年末は避けられない。
そういう事になっているらしい。
何故なら――

クリスマスがありやがるからだ。

……。
…………。
………………。

「あーあー、予想以上だなこりゃ」

ある物が俺の部屋を埋め尽くす目の前の光景に、諦めにも似た笑みがこぼれた。
浮かれずにはいられない。
慌ただしくなるのは間違いない。
沈んでいる場合ではない。

去年、何もかもを失ったクリスマスイブを終え、新年を迎えた俺は春に引っ越しをした。
一応自動で契約期間が2年更新される事は確認済みだったが、せっかくの機会だからと決断した。
今まで住んでいたのは【風呂、トイレ付きで出来るだけ安いマンション】という条件で借りたマンションだったわけだが、もう就職してちゃんとした収入もあるし、一人で贅沢もせずに暮らしてきたおかげで多少の蓄えも出来ていたので、思い切ってもう少し広くて通勤に便利なマンションに替えたのである。
前回は安さだけを条件にしたので候補が少なかったのだが、ほんの少し価格帯を上げて探すだけでも結構候補の物件は増えるもので、何だかんだで今までの家賃とそう大して変わらずに広い部屋へと引っ越す事が出来た。

そうして新たな生活にも徐々に慣れ、世間はまた年末である。
仕事を終え帰宅した俺の目に飛び込んできたのは、リビングの半分近くを埋め尽くすプレゼントの山。
去年も部屋の半分がプレゼントで埋め尽くされたが、去年まで住んでいたのは8畳であり、今住んでいる15畳と比べるとまだ可愛いものである。

何故俺の新しい部屋にプレゼントが山積みになっているのかって?
その理由は説明するまでもないだろう。
でもせっかくだから説明させてもらう。

「こんなに一晩で配れるのか?」

「どうかなー?明日まで残っちゃうかもね」

「26日の朝って、もうクリスマスじゃないぞ」

「うー。でも私まだ一人前のサンタかどうか分かんないもん」

俺にぴったり寄り添うようにして、突如部屋に現れたプレゼントを一緒に見上げる女性が、くちばしのように口を尖らせた。
そう、俺の部屋にプレゼントが現れたのは、もちろんアンナがこの部屋で一緒に住んでいるからである。

拗ねた表情が愛しくて、優しく抱き締めて口づけを交わす。
感情が昂るとアンナはすぐに俺の指を咥えようとするので、そうならないように早めに唇を離した。

「うー。みじかーい」

アンナが抗議の声を上げるが、今はお互い我慢しなければ。
これからアンナは年に一度の大仕事に向かわなければならないのである。
抱き締め合った体勢のまま、俺は隠し持っていた物をアンナの銀色の頭に被せた。

「ん?何これ?」

「去年渡しそびれたから。あった方が雰囲気出るだろ?」

「あー!サンタの帽子ー!やった!」

去年ドラッグストアに駆け込んで購入したサンタの帽子。
サンタデビューのお祝いのつもりで買ったプレゼントだったが、去年はそれどころではなかったので仕方がない。
一年経ってようやく被った姿を見る事が出来た。
嬉しそうにはしゃぐ姿を見て、恐らく俺の方が嬉しいんだろうな、と思った。

「じゃ、行ってくるけど、まどっちは寝てて良いからね」

「そりゃそうだ。明日も仕事だからな」

「私がいないと一人で寝るんだよ?寂しがって死なない?」

「死なない!」

「え、死なないの?」

「どっちなんだよ。寂しいけど大丈夫だよ。でも出来るだけ早く帰ってきて欲しいな」

「はーい」

隣にアンナがいる。
それだけで俺は死なない。
俺の心は二度と壊れたりしない。
そんな事を想いながら、年に一度の大仕事のため、ベランダに迎えに来たソリに乗って夜の街へ飛び出していくアンナの誇らしげな背中を見送った。

続く

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