そしていよいよ8月31日。ミニーがどこかへ出掛けるかもしれないので、朝早くに起きてミニーの家へと向かった。前日の話し振りだと、どうやら予定は無い様子だったけど。
と、よく分からないが簡単に、31日は会わない事が決定した。まぁ告白を決意した時点で驚かせるという目的はどうでもよくなって、もし会う展開にしか持ち込めなかったとしても、告白しようとは思ってたけど。
山手線で品川まで向かい、そこからミニーの家へと歩いた。家が近付いてくるのに従って、僕の緊張も高まっていった。告白なんて初めてだし、その相手も普通ではない。結果なんて予想するだけ無駄と思うくらいに、ミニーという存在は何を考えているのか推し量れない。
告白の言葉も何も考えてこなかった。僕の思った通りに会話が出来るような相手じゃない。下手に会話のゴールを決めてしまうと、いざ違う展開になった時にパニックになりそうだからな。
家の前に着いた。呼び鈴を押そうとする手が震える。そのまま押したものの、何も音が鳴らなかった。そうか、震える手でボタンを押すと呼び鈴がマナーモードになるんだな?
……などとふざけている場合ではない。震えていてボタンをちゃんと押せなかっただけだ。
今度はしっかりと、左手で右手首を押さえながら押した。
ピンポーン
と、ミニーの家の割りにはありきたりな音が鳴った。緊張で声が出ないとマズイので、咳払いをして待った。
………………。
何も反応が無かった。もう一度押してみる。
………………。
何も反応が無かった。どういう事だ?
夏休みとはいえ、学生以外の人達にとっては平日で、きっとミニーの両親は出掛けているだろう。じゃぁミニーはどうしたんだ?
呼び鈴の音に気付かないほど鈍感なタイプだとは思えないし……と思ってもう一度呼び鈴を押したものの、やっぱり反応が無かった。
こんな時に携帯が無いのは不便だ。僕もミニーもこの時はまだ携帯を持っていなかったのだ。
仕方が無い。出掛けているなら待つしかない。幸いミニーの家の向かい側の並びにコンビニがあったので、そこで家の様子を窺いつつ立ち読みをして、ミニーが帰ってくるのを待つ事にした。よく言えば刑事や探偵みたいなモンだ。世間一般ではストーカーみたいなモンだろうけど。
そのまましばらくコンビニの中で立ち読みを続けた。4時間?5時間?ひょっとするともっと長く。
完全に店員が一人、僕をマンマークしていて、何か怪しい動きをしないかどうか見張っている。良かったじゃないか、今日は僕の周りで本棚を整理する振りをし続けただけでバイト代をゲットだぞ。
一日のうちで最も暑い時間はとっくに過ぎ、僕はコンビニを諦めて家の前で待つ事にした。
念のため呼び鈴を押したけど、何も反応が無かった。
と、その時。
確かに家からは反応が無かったが、家の外に動きがあった。
いきなり何かが僕にぶつかってきたので見ると、目の前で青白い物体がうずくまっている。
何なんだ一体。何故ミニーの家の前をハイジが通るんだ。
いつもの場所か……。根拠は無いけど、ハイジが言うと妙に本当っぽい。
まぁ良い、大した距離じゃないし、行ってみてミニーがいなければまた帰ってくれば良いか、と【いつもの場所】から連想される場所へ行く事にした。