泳ぐと溺れてしまう人と、水に浮く人の会話の特徴とは？

ええ、そうね。二人とも泳げないから仕方が無いわ

あらそう。いつの間にかずいぶん成長したのね。それなら本気を出すけれど、どうして海というのは地球に存在するのかしらね。ちょうど全てが蒸発せずにちょうど全てが凍らずに、ちょうど良い距離に太陽が存在していなかったら一体どうなっていたのかしら。そもそも海は広さが陸地の２、４倍もある事は有名だけれど、更に深さも平均３７００メートルを超えるのよ。地球の７割と言われているのはあくまで面積の話で、体積にしたらとんでもない水量よ。地球の７割が富士山の高さと同じ深さの海という事になるものね。そんな圧倒的な水量を誇る海があるからこそ地球が今のような状態になっているとは思うけれど、海流という自然現象を考えた時にこの海水というのが重要で、塩分の濃度の差によって海流が起こるとも言われているわ。更に地表の風が影響しているとも言われていて、二つをそれぞれ【熱塩循環】と【風成循環】、そして総称して……

まぁ、あなたが泳げるとか言うから話をしているのに、完全に言葉の海と話の流れに飲み込まれて溺れてしまっているじゃないの。あまり期待させるようなウソは言わないでちょうだい。完全に泳がされてしまったわ

うるさいわね。大声を出して空気を波立たせても私は溺れないわよ、腹立たしいわね。もしかして泳げるような深さではない場所で泳ごうとした私に問題があると言いたいのかしら、失礼な。でも一度も水泳をした事が無い私が水泳の話なんてするはずがないじゃないの。何を考えているのかしら

あら、私なんてまだまだよ。今のような実力で泳げるなどと高らかに宣言してしまうと、オリンピックにも関わらず溺れてしまったどこかの選手みたいな扱いになってしまうに違いないわ。時折バラエティに呼ばれてカナヅチの子供と勝負させられたり、名前を当てさせるクイズの問題として扱われたりするのよ

まぁ、私のせいで隣のコースを泳いで失格になったと言いたいのかしら、失礼な。会話は水泳と違って、相手を妨害したり相手を沈めたりしてもルール違反にはならないのよ。言葉という実体の無いものを扱うからこそ、とんでもない罵り合いの傷付け合いの泥仕合になったりもするわ

引っぱたくわよ

うるさいわね。どうせ【気軽な話題も軽快な空気も何でもかんでもすぐに重くしてしまう真っ黒な分銅のような女】と思ったんでしょう？あなたの事は何でもお見通しよ。ピンセットで丁寧に扱わないとすぐに重さが変わって使い物にならなくなるから注意してちょうだい

うるさいわね。とにかく泳ぎに行くとしたらあなたの事なんて綺麗さっぱり忘れてからという事になるんじゃないかしら。今はまだ覚えてしまうから無理よ

違うわよ。今はまだ溺れてしまう、って言ったの。あなたへの想いが重過ぎて恋に溺れてしまって、そんな私が泳げるはずが……って、何を言わせるのかしら、みっともない

そうかもしれないわね。あなたと一緒にいる私はとても浮かれているもの