ブログネタ:優しい人ってどんな人?
ミッキー
今朝は駅で老人の荷物を持ってあげている人を見掛けたぞ。ああいうのがさりげなく出来る人になりたいよな
ミニー
あらそう。それは気の毒だったわね
ミッキー
え?何で?心温まる光景じゃないか
ミニー
そうかしら。荷物を持たれた人はまだまだ自分がお年寄りだとは思っていないかもしれないわ。それなのに荷物を持ってあげなければろくに歩けないようなお年寄りだと周囲から見られていた、という現実を突き付けられてしまったのよ。もう明日からは生気もヤル気も覇気も元気も失って、つい引き寄せられるように優先席の近くに立ってしまうかもしれないわね。こうしてまた一人、高齢化社会の犠牲者が新たに誕生してしまったのよ
ミッキー
最後はよく分からなかったけど、まぁ言いたい事は分かったよ。でも今朝僕が見かけたケースでは荷物を持たれた人も喜んでたみたいだぞ?
ミニー
あらそう。それは気の毒だったわね
ミッキー
だからどうしてそうなるんだ!
ミニー
うるさいわね。本来ならばまだ自分が荷物を持たれるような年齢の人間ではないと怒りたいところをグッと我慢して、荷物を持つと言い出した失礼な人のために喜んだふりをしているのよ。そうして衆人環視の中、荷物を持たれたうえに相手に気遣いまで見せて、さぞ朝からストレスが溜まったでしょうね。ストレスで一気に元気な細胞が死滅して、別れ際には本当にちょっと老け込んで見えてしまっているかもしれないわ。でも優しい人で荷物を持った人も助かったわね。本来ならば朝から公衆の面前で大喧嘩をするはめになっていたかもしれないわ
ミッキー
うーん、何だか声を掛けるのと掛けないのと、段々どっちが優しいのか分からなくなってきた。あんなに心温まる光景に見えたのになぁ
ミニー
そうね。それにこの世知辛い世の中、例え知り合いでさえ容易には信頼出来ない時代よ。ましてや見ず知らずの人がどうしても運動能力で劣ってしまう年配の人の荷物を運ぶなんて、途中で引ったくりに心変わりをしても何も不思議ではないわ。あまり貴重な物が入っていない荷物だからこそ持たせたんでしょうね
ミッキー
何だか聞けば聞くほど生き辛い世の中だな……朝の時点ではこういう話をするつもりじゃなかったはずなんだけど……じゃぁ例えば僕がお前の荷物を持とうとしたらそれはお前にとって嬉しくないわけだな?
ミニー
あら、どうしてそうなるのかしら、失礼な。あなたは私の荷物なんて一切運びたくないと言いたいのね。こんなに優しくない人だとは思わなかったわ。二度と私に近寄らないでちょうだい
ミッキー
おい!お前の理論通りに話しただけじゃないか!前言撤回が早過ぎるぞ!
ミニー
うるさいわね。今の話とあなたの朝の話では全く意味合いが違うじゃないの、腹立たしいわね。死人が出るわよ
ミッキー
荷物を持つのは同じじゃないか!それでどうして僕が死ななきゃならないんだ!
ミニー
違うわよ。信じてるわよ、って言ったの。あなたと他の人では全く状況が違うじゃないの。私だってあなた以外の人には荷物なんて持たせないわよ、失礼な
ミッキー
な、なるほど……僕の事だけは信頼してくれてるのか……嬉しいぞ
ミニー
それにあなただけは私の荷物を奪って逃げるような度胸は無いものね
ミッキー
……確かにそれは否定出来ないな
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