この秋に絶対料理したい、食べたいものは食べ物ではなく言葉？

さぁ、どうかしらね。絶対と言われると特に思い付かないわ。以前も少し話したけれど、今はお金や手間に糸目をつけなければ、余程の事がない限り一年中食べたい食材が手に入るものね。今年は秋刀魚が高いと聞いた人が、逆にレア物感を煽られてしまってどうしても食べたくなってしまったけれど、スーパーで５０００円もするのを見て断念するのよ。結局店内を物色した結果、秋刀魚の缶詰を買って帰るわ。でも家で缶詰を食べながら、缶詰だったらサバの方が美味しかったかもしれないと後悔しながら食事をするようなものよ

あらそう。秋茄子は嫁に食わすな、と言いたいのかしら？でもあれは残念ながら【美味しいから嫁に食べさせるのは勿体無い】という意味ではないのよ。茄子は身体を冷やす食べ物だから、夏に食べる分には良いけれど、秋に食べると体調を崩すと言われているわ。だから【こんなうだつのあがらない、特徴の無い、つまらない息子と結婚してくれた大切な嫁に秋茄子を食べさせるなんてとんでもない】というのが本来の意味よ

でも既にどちらの意味も正解なくらい浸透しきっているわね。去年まで一番好きで応援していた地元チームの野球選手が、次の年はお金に目が眩んで違うチームに移籍してしまうのよ。その選手が今度は敵チームの主力として地元の球場に再びやってきて大活躍をした時に、応援したら良いのか野次を飛ばせば良いのか迷って混乱してしまうファンみたいなものよ。その選手にしてみれば、どこのチームに所属しているかどうかなんて大きな問題ではないし、既に新チームで応援されているから元のチームには何の思い入れも無いのにね

そうね。でもやはり絶対に食べたいという物は特に見当たらないわね。いつもいつも【閉店セール】とか言いつつ全く閉店せずに数年間営業している洋服屋さんが、突然【絶対に閉店セール】という貼り紙を始めるのよ。ついつられて足を運んでみても、値段も品物も特に変わり映えがなくて、ガッカリして何も買わずに帰るわ。すると数日後【今度こそ絶対に閉店セール】という貼り紙に変わっていたの。どうせ何も変わらないだろうと素通りしていたら、本当に数日後に閉店してしまったのよ。その状況を目の当たりにした人が、絶対という言葉がどれだけの絶対性を持って絶対と言っているのか、一体全体どういう事なのか分からなくなってしまったようなものよ

まぁ、質問ではなくて私がつまらないから盛り上がらなかったとでも言いたいのかしら、失礼な。絞り上げてやるわよ

違うわよ。イモを揚げてやるわよ、って言ったの。秋に絶対食べたい物なんてそれくらいしか思い付かないわ