足を攣ったエピソード話をしようとしたら内容がこむらがえった件

あらそう。良かったわね

でも折れてなかったなら良かったじゃないの。あなたのような寝相ではいつ骨折しても不思議ではないものね。身体の前にまず首だけが先んじて寝返りを打とうとしたりして、いつか首が取れるんじゃないかとワクワクしながら見守っているのよ

何をぶつぶつ言っているのかしら。気持ち悪いわね。死にそうな事態にならないかどうかくらいは見張っているから安心して寝て良いわよ

さぁ、どうかしらね。確か小学生の低学年の頃にあったんじゃないかしら

夏休みに父が【川原にキャンプをしに行こう】とか世迷言を言い始めたのがキッカケよ。都会の生活が大好きな私は、全く必要も興味も無いキャンプに行く事を拒んで、家の中でしっかり足を踏ん張っていたわ、トイレに篭って便器を両足で挟んだり、家の柱に両足を絡み付けたりして抵抗したわ

ちょっと、人の話を遮るのは辞めてちょうだい。結局大人の理不尽な力に子供の私は抵抗出来ずに、車の中に押し込まれたわ。車に入る前もドアのところで足を踏ん張って抵抗したり、車の中でもずっと地団太を踏んで抵抗したわ。後部座席に押し込まれた私は、父が運転する運転席の頭部のクッションを蹴り続けたりもしたわね。とにかく行きたくないという意志を足で表現したわ

うるさいわね。人の話を遮るのは辞めてちょうだい。結局車内でどれだけ暴れても車のエンジンは止まらずに、キャンプ場へ到着してしまったわ。降りる時も運転席に両足を絡めて必死に抵抗したり、大きめの岩に両足でしがみついたりしたけれど、結局テントを張った辺りに運ばれてしまったわ。【面白いから火を熾してみろ】とか言われて、板を両足でしっかり抑えながら火熾しをさせられたわ。でも手にも足にも余計な力が入り過ぎて全く火が熾せずに、結局ライターで火をつけたのよ

人の話を遮るのは辞めてちょうだい、と言ってるじゃないの、うるさいわね。【今度は火にくべる薪になる棒を探しに行こう】とか言われて、山の中を歩き回るハメになったわ。歩き疲れて足が棒のようになって、私の足をくべたらよく燃えるはずだと思ったくらいよ

どうしてそう何度も何度も話を遮るのかしら？いいかげんにしてちょうだい。薪が準備出来たら【魚釣りをしよう】とか父が言い出したのよ。それに関してはあまり嫌な気はしなかったけれど、岩場が苔むしていてかなりツルツルと滑る状態になっていたわ。釣りよりも倒れずに立っているようにバランスを保って踏ん張っている事の方がよほど重要だったわね。普段使わないような足の筋肉まで全て総動員して立っていたようなイメージかしら

うるさいわね。もう邪魔はさせないわよ。足場に悪戦苦闘している私の竿に魚がかかったのよ。何だか分からないうちに、釣竿ともつれ合うように川原へ移動すると、魚の尾ひれに針が引っかかっていたわ。魚が針を咥えたわけではなくて、ただ運良く針が後ろから引っかかっただけだったのよ。そしてその時私は、魚の尾ひれは人間の足のようなものかもしれない、今私はこの魚の足を釣ったのね、と思ったのよ

あら、魚が足を釣られたような顔をしてどうしたのかしら。あなたが足をつった話をしろと言い出したんじゃないの

まぁ、私に足かせをして話しづらくさせようとしているのね。足を引っ張ろうとしてもそうはいかないわよ。更に根底から否定して足元をすくおうとするなんて失礼な。足をつるわよ

違うわよ。アジを釣るわよ、って言ったの。アジを釣った時の話もあるから今から披露するわ

うるさいわね。冗談よ。でも私の話にしっかり足を突っ込んだところを見事に釣り上げてしまったわね