ブログネタ:あなた、君、お前、呼ばれてて抵抗あるのは?
ミッキー
日本語が文脈以外の情報を多様するって話は以前聞いたけど、他にも相手の呼び方が多かったりするのも特徴だな
ミニー
そうね。しかも時代によってその意味は大きく変わってしまうわよ。それを知っているかいないかで、何か話の展開が変わるというシーンも起こり得るかもしれないわ
ミッキー
へー、昔は【あなた】とか【君】とか【お前】も何か違う使い方だったりしたのか?
ミニー
ええ、そうよ。かつての【お前】は御前(みまえ・おんまえ)という意味よ。要するに神仏や貴人の前を敬う言葉ね。この【前】というのが重要ね。神仏や貴人そのものではなくて、その【前】の場所を指しているの。神仏や貴人を直接呼ぶなんて失礼な事はとても出来ないと考えられていたわけね。だからその人のいる前の場所を敬意を持って呼ぶようになったのよ。ただ、あまりにも言葉遣いが丁寧過ぎるとかえって失礼に聞こえてしまう事があるでしょう?例えば友人相手にいつまでも敬語で話したらお互いの距離は縮まらないままよ。そんな理由で明治以降は逆に目上の人に使うには失礼な言葉に変わってしまったのよ
ミッキー
なるほどなぁ。それにしても前の場所を呼ぶっていう考え方がスゴイな
ミニー
あなたもいつも私の前を呼んでいるじゃないの。私はずっとそう認識していたけれど、まさか近現代的な用法で私をお前と呼んでいたんじゃないでしょうね
ミッキー
うううっ、えーと……昔の使い方なんて知らなかった、という事で察して欲しい……
ミニー
まぁ、私があなたと対等かそれ以下だと認識されていたとはショックだわ
ミッキー
少なくとも以下って事は無いぞ!でも僕達はどう考えても対等な関係じゃないか
ミニー
あらそう。今後はもっとしっかりしつけないとダメかしら……
ミッキー
おい!聞こえてるぞ!
ミニー
うるさいわね。冗談よ。では次に【あなた】ね。これは彼方が語源ね。遠くにいる人という意味よ。特に敬意も何も無い言葉だったけれど、いつの間にか敬意の意味が少し含まれるように変化した言葉ね。だから目上の人に使っても問題ないわ
ミッキー
なるほど、元々は会話中の相手を指す言葉じゃなくて、【あの人】とか【あちらの人】みたいな意味だったのか
ミニー
ちなみに私は旧時代的な用法であなたに対して使っているわ
ミッキー
それじゃ敬意も無いし、近くにもいないじゃないか!……まぁ敬意が無いのは別に構わないけど
ミニー
あら、ずいぶんと素直になったわね。早速しつけが上手くいきつつあるのかしら
ミッキー
だから聞こえてるぞ!
ミニー
うるさいわね。冗談よ。最後に【君】も本来は尊くて高い位の人に対して使っていた言葉ね。それがやがては愛情を抱く者や親しい者に対して使われるように変化したのよ。そうして一般人に対して使われ始めた結果、軽い敬意を含む便利な語として広く誰に対しても使われるようになったの。そうなると次第に敬意も薄れてしまうわ。最終的には対等な関係の相手に使うケースが増えてきたというわけね
ミッキー
という事は、どれも既に最初の使い方とは違うわけか。そう考えると面白いな
ミニー
よく【若者の日本語が乱れている】とか言うけれど、日本語の歴史は変化の歴史なのよ。漢字を導入したり、片仮名や平仮名を生み出したり、劇的な変化だって容認してきたわ。乱れているのは自分の世代だけが正しいと思っている価値観の方よ
ミッキー
なるほど。まぁそうやって言ってる人だってきっと若い頃は同じように言われたんだろうしな
ミニー
言葉はなものなのよ。そのの形で留まるだなんてあいあたをしていると、たにントヒヒがかってくれる程度のつらない人生になるわよ
ミッキー
えーと、何を言ってるのか聞き取りづらかったんだけど……何だったんだ今のは?
ミニー
言葉は生ものなのよ。そのままの形で留まるだなんて甘い頭をしていると、たまにマントヒヒが構ってくれる程度のつまらない人生になるわよ、って言ったの。今後流行るかもしれない言葉を先取りしてみたのよ
ミッキー
何だその流行りそうな言葉ってのは?
ミニー
【ま抜け言葉】よ。間抜けな人と話す時限定で使うの
ミッキー
咄嗟には難しいから流行らないんじゃないのかな……っていうか使う時の理由が失礼過ぎるぞ!
ミニー
うるさいわ。じゃぁ……抜き言葉で良いわよ
ミッキー
ん?もう始まってるのか?普段なら【うるさいわね】って言うはずだから【ね抜き言葉】か?
ミニー
さぁ、どうかしら。私はすっかりあなたに……抜きにされているのかもしれないわ。これ以上はもう何も言わないわよ
ミッキー
うーん、何となく分かったような……
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