柔らかいのや硬いのはラーメンの麺だけとは限らない話

ええ、そうらしいわね。それがどうかしたのかしら

さぁ、どうかしらね。お店が提供している限りは全て正解なんじゃないかしら。趣味が高じて脱サラして始めたようなお店ばかりだとしても、一応お店を構えているからにはプロの料理人なんでしょうからね

ええ、そうね。どこからどこまでの茹で加減が美味しいのか、お店なら把握しているでしょうからね。後はその茹で加減を何となく通っぽい名前にすれば勝手にグルメぶったお客が価値を見出してくれるわよ

あら、そうだったかしら。ラーメンなんてどうせ暗い顔で思い詰めた様子で一心不乱に取り憑かれたようにすすって食べる食べものじゃないの。でもその様子が高尚だという演出をして世間を騙しているわね。そうしておかないといざ【ラーメン好き】と言ったときに安っぽい人間だと思われてしまうものね。実際には何か利点があるとすれば、空腹が紛れるという点だけでしょうけれど

うるさいわね。大きな声を出せばラーメン屋のお客が盛り上がっているように聞こえると思ったら大間違いよ。好きな人は外野の否定的な意見なんて気にせず好きなように食べたら良いじゃないの。それとも誰かが否定的な口コミを書き込んだらもう美味しく感じなくなってしまう程度の味覚なのかしら？世の中には人の数だけ違った価値観があるのよ。丼の中に全く味の違うスープと具と麺を入れても全て【ラーメン】と呼んでしまうような適当な人達と一緒にしないでちょうだい

何をごにょごにょ新しくオープンしたラーメン屋に食べにいってみたら、【麺とスープと具の概念を変えた全く新しいラーメンです】と言われたので期待していると、麺の中に具とスープを入れただけの、どう見ても小龍包と全く同じ料理が出てきた男のようにつぶやいているのかしら、気持ち悪いわね。それで結局今日は一体何の話なのかしら？話題を茹で過ぎて形がなくなってしまっているわよ

あらそう。所詮はフライドポテトしか美味しく感じない私が何を言ったって、ほとんど敗者のたわ言みたいに受け流せると思うけれど。それともラーメン好きの人はそういう不味い言葉ほど好んで体内に取り入れてしまうのかしら？

あら、そうかしら。私はたかがラーメンと思われていたような料理を皆で盛り上げて価値を高めてしまってスゴイと思っているわよ。でも、店主が過去に修行したお店とか、ダシの取り方が今までとちょっと違うとか、店主が厳しくて客を叱りつけるとか、そういう事には別に興味がないお客も大勢いる事を知っておいた方が良いんじゃないかしら。あまりストイックな人達が幅を利かせると、一部のマニアだけを惹き付けるおかしな料理になって衰退してしまうかもしれないものね

さぁ、どうかしらね。カンカンに固い方が良いんじゃないかしら

違うわよ。関係は固い方が良い……って、何を言わせようとしているのかしら、みっともないわね

………………

あら、何かしら。もうこの話題は茹で過ぎて形が無くなってしまったんじゃないかしらね。もう商品にならないから作り直してちょうだい