大嫌いな納豆がいつの間にか大好きになる会話術とは

あら、何かしら、突然、気持ち悪いわね。嫌いな食べ物なんて無理して食べなくたって良いじゃないの。好き嫌いはしないように、などと言われて私達は皆育てられるけれど、美味しいと思わないものを無理やり食べたって作った人は喜ばないんじゃないかしら。必要な栄養素だって他の食品で補えば良いのよ。何を考えているのかしら

あらそう。そうして試作に失敗した納豆達の運命はどうなるのかしら？まさかどうせ味なんて分からないからと私が全て食べなければならないんじゃないでしょうね。体内が全て納豆だらけになってしまって、納豆のワラの気持ちになったらどうしてくれるのかしら

あらそう。そんな風に油断してのんびりしていると最後の方には買った納豆が腐ってしまうんじゃないかしら。腐っている食べ物が腐ったらそれはもう殺人兵器みたいになっているかもしれないわよ

うるさいわね。１パック買いたかっただけなのに数パック一緒に粘ってくっ付いてきてしまうかもしれないじゃないの。でも残すのは感心しないわよ。よくダイエットの専門家が【カロリーの高い付け合せ料理などは手を付けずに残せば、肉や米をある程度食べても大丈夫】などと言ったりするけれど、食べ物の廃棄が世界で問題になっている時代に料理を残す事を前提に話してしまっても良いのかしらね。まさか生産者や料理人を心労でゲッソリさせるのがこの専門家のダイエットの奥義なのかしら？

さぁ、どうだったかしらね。臭いものに蓋をして会話したらこういう事になってしまったんじゃないかしら。って、何をくだらない事を言わせているのかしら。とにかく妙な話に花を咲かせて二人が臭い仲だとバレたらみっともないじゃないの。って、何度も何度もくだらない事を言わせないでちょうだい。どれだけ言葉を掻き混ぜたって上手い言葉にはならないわよ。って、何回上手い事を言わせれば気が済むのかしら

うるさいわね。冗談に決まってるじゃないの。それで結局何を話したいのかしら？話題の発酵が進まないから何が何だかさっぱり分からないわ

あらそう。そういうのは嫌いな理由を取り除けば良いんじゃないかしらね。例えば顔を見るのも嫌だった人が整形手術によってとても美しくなって現れた結果、自慢げな様子が更に鼻について本当に顔を見るだけで腹立たしくなって視界に入れる事が嫌になってしまったようなものよ

あらそう。臭いに関しては香水でも吹きかければ大丈夫でしょうね。そして食感は綺麗に洗い流して、更に念を入れてミキサーで潰して豆乳みたいにしてしまえば良いんじゃないかしら

まぁ、納豆が一番嫌いと言っておいて、納豆の特徴をしっかり取り除いた料理の方が嫌いだなんて事態が起こるはずがないじゃないの。ご飯だってパンだってラーメンだって、納豆の特徴は持ち合わせていないわよ。という事はあなたには好きな食べ物なんて存在しなくて、唯一嫌いなのが納豆で、他の食べ物は全て大嫌いという事になるわね。それでは食事をするのは苦痛でしかないでしょうね、可哀想に

うるさいわね。冗談だと言っているじゃないの。いつもいつも私の言葉にまとわりついてこないでちょうだい。納豆が嫌いなのは同属嫌悪みたいな理由なんじゃないかしら、腹立たしいわね

あらそう。そのわりには赤い糸のようなものを私に巻き付けようとしているじゃないの、いかがわしいわね

……やはり思った通りくさい事を言っているじゃないの、いかがわしいわね。どうやって納豆から人間に進化したのかしら。そのうち納豆みたいに私への想いがどんどん減っていくに違いないわ。あまり私に近寄らないでちょうだい

うるさいわね。納豆のあなたは想いを足したり掛けたりせずに粉々に砕くつもりじゃないの

………………

……しつこいわね。あまり粘らないでちょうだい。いつまで納豆のフリを続けるつもりなのかしら